HPが米国時間で10日、HP Chromebook x2 11を発表した。キックスタンド搭載、キーボード着脱式のChromebook タブレットだ。アスペクト比3:2の11型1440pディスプレイ、SoCとしてSnapdragon 7c、8GBのRAM、64GBのeMMCを搭載。価格は599.99ドル。なんだかどっかで見かけたようなデザインだ。
Snapdragon 7cは2020年に発表されたSoC
国内ではパソコン市場に再参入したシャープが復帰第1弾としてソフトバンクなどの通信キャリアとタッグを組み、文教および法人に売り込みをかけているDynabook Chromebook C1に採用されているが、キーボード脱着式2in1のChromebookでSnapdragon 7cを起用した製品は史上初となる。
前々からChromebookでエンタメ(と言うかAndroidアプリゲーム)を楽しもうとする奇特な人種からSnapdragonを搭載したChromebook タブレットを期待する声はあったが、Snapdragon 7cはゲーム向けのフラッグシップSoCよりだいぶ性能が低いし(Geekbench 5でSingle 524、Multi 1559、グラフィックス性能はSnapdragon 670に近似するくらい)、直近ではLenovoのYoga tabがフラッグシップ向けSoCを搭載したAndroidタブレットとして国内に投入されている。エンタメ目的なら素直にそっちを買ったほうがいいと思う。
Chromebook新製品は安くない
Detachable CM3を使っていて、Chromebookって安いんでしょ?と聞かれることがある。エンタメ目的でも安価な製品が欲しくてChromebookを検討しているのだろうが、これは誤解だ。Chromebookは別に安くない。プラットフォームが違うので単純比較は出来ないが、Snapdragon 7cより高性能なSnapdragonを採用し、もっと安価なAndroidスマートフォンが山ほどあるし、Windows PCだってLenovo、Dell、HPのBig 3の直販でRyzenやCore i搭載ノートPCが6万も出せば買えてしまうのを考えれば、基本的に性能からすると割高だ。
なんでこういう状況になっているのかというと、最近のChromebook(2017~)はGoogleが設計したオリジナルのセキュリティチップが組み込みで内蔵されていて、基板設計の段階からGoogleの手が入っている。Pixel スマートフォンもGoogleのオリジナルセキュリティチップを搭載していて、他社のAndroidスマートフォンよりは割高だ。セキュリティがより厳格な仕様になっている代わりに高コストで、基本的に文教や法人市場で一括導入されることをターゲットに設計されているために供給に問題を抱えているSoCも採用されない。
ただし、型落ちのChromebookは安い
Chromebookは製品ごとに明確に最新のソフトウェアアップデートが提供される期限が区切られていて、型落ちになるとがくんと市場価格が落ちる。古い製品は単純に性能も低いので実用性に劣るのだが、GIGAスクールである程度注目を集めるまではこういった製品を海外のAmazonなどで発見してChromebookは安い!と誤解されがちだった。
国内で売り出しをかけるに当たって戦略的に割引を仕掛けてくることがあり、最安値の時のIdeapad DuetやDetachable CM3は実質価格が2万5000円を切るようなこともあったし、実際安かったと言ってもいいと思う。
もっとも、そもそもChromebook x2 11は国内市場への投入どころかグローバルでの展開すら予告されていないし、仮に日本で発売されたとしてもおそらくは新学期シーズンの3月とか4月になるだろう。欧米の新学期シーズンは7月あるいは8月ということでChromebookの新製品もこの時期に集中する傾向があり、日本の新学期は4月なので新製品の投入は後回しというわけだ。
コロナ禍の初期に学校教育機関が休校を強いられる中、新学期の時期を欧米式に切り替えろと一時期騒がれ、結局そんな簡単に実行できることではないので断念されたことがあったが、日本式教育カリキュラムには一般消費者としても新製品の投入を後回しにされるという弊害が存在したのである。日本語ローカライズの手間もあるのでそんな簡単に新製品の投入時期が早くなることはないだろうが。
参考・関連リンク
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