Windows 11の登場に伴い、11月に市場への投入が予告されているIntelの12世代Core プロセッサ Alderlake。異種混合(big.little)コアへの切り替えなどの本格的なアーキテクチャの刷新だけでなく、DDR5メモリやPCIe Gen5.0への対応がなされる予定だ。
ただし、Alderlake発売時点ではDDR5メモリは一般で流通していない。また、DDR5の流通が始まった初期の製品では、dGPUを搭載するゲーミングPCではDDR4からDDR5へメモリを切り替えても性能の向上を実感出来ない可能性が高い。
▼更新履歴
11月3日:実際の製品が出回り始めるので一部追記・修正
- DDR4からDDR5で何が進歩するのか
- 帯域は向上したがレイテンシも肥大化
- DDR3からDDR4への移行期も同じ問題が
- dGPU非搭載の製品でカジュアルにゲームを楽しみたい場合の恩恵は大きい
- 参考・関連リンク
DDR4からDDR5で何が進歩するのか
DDR4からDDR5で何が変わるかというと、まずは動作周波数が違う。型番についているDDR4-xxxxとかDDR5-xxxxのxxxxの部分に書かれている数字だ。この部分がメモリの基本的なデータ転送レートを表している。
DDR5メモリではこの数値が非常に高くなり、大きなデータの読み書きが速くなる。DDR5はDDR4と比較して最大で2倍の高速化、とか謳っているのはこれを持って最大2倍としていることが多い。
また、動作周波数向上のためにより微細化したプロセスルールを採用した回路が使われることになる。それによって、より高密度、大容量のメモリが生産されていくことになっている。
帯域は向上したがレイテンシも肥大化
問題は、動作周波数の向上によって大きなデータの読み書きは高速化しているがレイテンシが肥大化することで細切れの小さなデータを頻繁に読み書きするときの動作が低速化してしまっていること。レイテンシというのは、コマンドが入力されてから実際にデータが使用できるようになるまでの遅延時間。
大きなデータの読み書きというのは、通常のアプリケーションではそれほどあることではない。パソコン上で扱われる大きなデータというと基本的に画像・音声・映像となるが、dGPU(外付けグラフィックボード)を搭載するシステムではそういった大きなデータの大半はGPU上のグラフィック専用のメモリ上に展開される。DDR5のようなDRAMでは細切れの読み書きが頻繁に行われる。1度データの読み書きが始まればこれまでよりも高速に機能するが、一定の大きさのデータでないとこれまでよりも低速に動作するということが発生してしまう。
(メモリ(RAM)のレイテンシというと、CASレイテンシを指していると思われるのが一般的だが、この場合のレイテンシはCASの待機時間にメモリとコントローラの速度を組み合わせたもの。CASレイテンシ自体が世代の刷新に伴い増加しているのでCASレイテンシが上がったからレイテンシが肥大化したという認識はそんなに間違っている訳ではないが)
DDR3からDDR4への移行期も同じ問題が
実際のところ、こういった問題は旧世代であるDDR3からDDR4への移行期にも発生していた。今現在はDDR4の動作周波数が改善されたために問題となっていないが、初期に生産された動作周波数が低かったDDR4メモリでアプリによってパフォーマンス低下を起こすことがあった。DDR5のレイテンシが増幅することも以前から指摘されていたことで、今後の動作周波数の向上で改善されていくことになる。将来的には動作クロックは8,400MHzまで拡張されていく予定。
Alderlakeにおいては動作クロック4800MHzがスタンダードDDR5として流通する予定だが、DDR4と比較して完全に速いと言い切れるかはちょっと微妙なラインで、4kや高フレームレートでのゲームを楽しみたいゲーマー向けのパソコンにはあまり向いていない可能性が高い。帯域幅の恩恵を受けられるアプリが無いわけではないが(コンテンツクリエーションではいくつもあるだろう)、世代移行期の購買時にはベンチマークをよく確認して検討したほうがいい。
dGPU非搭載の製品でカジュアルにゲームを楽しみたい場合の恩恵は大きい
dGPUを搭載せず、DRAMをiGPU(内蔵グラフィックス)と共有するCPUを搭載する製品でカジュアルにゲームを楽しみたい場合には、DDR5への移行で大きく向上する帯域幅の恩恵を得られる。今後DDR5を搭載した製品が出回るようになれば、iGPUでもフルHD、60fpsでゲームを楽しむことが出来るようになっていく可能性が高い。
参考・関連リンク
メモリ(RAM)速度とCASレイテンシーの違い | Crucial Japan