AmazonのプライムセールでシャオミのRedmi Buds 5 Proを買った。定価は¥9,980だが、購入時価格は¥7,980。
廉価ブランドであるRedmiの中でも上位モデルという位置づけだが、シャオミブランドで販売されているXiaomi Buds 4 Proの公称最大48dbのアクティブノイズキャンセリングを上回る最大52dbを公称するパフォーマンスモデルだ。
2024年1月発売と、発売から6か月以上が経過しており既にレビュー記事や動画が溢れている製品なのでざっくりとレビューする。
(7月30日追記)搭載チップのベンダーやレイテンシなどの項目を追記。(追記ここまで)
外観
ステム(音の出るノズルのこと)は長辺が7mmほど、短辺が6mmほどの楕円形で一般的なイヤホン・ワイヤレスイヤホンのものよりかなり大きいです。FinalのType-Eは無理やり装着出来ましたが、FSCの短尺は装着出来ず。他社製のイヤーピースで使えるものはかなり少ないと思っていた方がよいです。
遮音性を重視して非純正からウレタンフォームタイプのものを選ぶ場合、ComplyのTW-700-Bあたりかな。
ノイズキャンセリング・外部音取り込み
アクティブノイズキャンセリング(ANC)はライト・バランス・ディープの三段階切り替えでコンパニオンアプリからアダプティブ ノイズキャンセリングによる自動調整、パーソナライズされたノイズキャンセリングの付加機能も有効に出来ます。
ライトモードはフィードフォワードオンリーのANCを搭載したワイヤレスイヤホンのそれに近い軽度なノイズ低減具合。
バランスモードは感覚的に公称-35~42dbくらいのハイブリッドANCを搭載するワイヤレスイヤホンのそれに近いです。
ディープモードは公称-52dbの通り、バッチリと低音域の連続的なノイズを低減してくれます。ただ、ノイズ低減が強力なぶん若干ホワイトノイズが乗るのが分かりました。ANC特有の鼓膜が圧迫されるような不快感は感じませんでした。
聴感を重視する場合はライトかバランスを、ノイズキャンセルを重視する場合はディープモードで運用するとよいでしょう。アダプティブノイズキャンセリング機能は周辺がよっぽどうるさくないとバランスモード優先しがちなのであまり実用性がないかも。
標準イヤーピースはS・M・Lの3サイズが付属します。シリコンタイプで、ANCを除くパッシブノイズキャンセリング(遮音性)はあまり強くありません。総合的にはAirPods ProやQuietComfort、XM4/5、Pixel Buds Proあたりには当然勝てず、軽量小型でシリコンイヤーピースなLinkBuds Sあたりに近しいノイズキャンセリング性能かなと。価格帯の近いEarFunやSoundPeats、Creativeなどの他社製品よりは強力です。
外音取り込みも標準・音声増幅・環境音増幅の三段階切り替え。こちらは自動調整機能はありません。音声増幅は音声が「増幅」されるというより環境音低減という感じ。違和感はほとんどありませんが、強力でもありません。
コンパニオンアプリ
Google Fast Pair対応なので今どきのAndroid デバイスで利用する場合、初期セットアップ時にコンパニオンアプリのダウンロードを案内してくれます。パッケージ等への記載はありませんがMicrosoftのSwift Pairにも対応しており、通知トーストから接続を選択するだけでペアリングを行ってくれます。*1
コンパニオンアプリからはバッテリーステータスの確認やANC・外音取り込みの切り替えの他、ANCやオーディオのパーソナライズの他、タッチジェスチャの割り当て、装着検出機能の切り替え、2台マルチポイントの切り替え、着信自動応答の切り替え、音を鳴らしてイヤホンを探す、ファームウェアアップデート(Xiaomiのアカウント連携必須)などの機能が利用可能です。
3Dオーディオ(イマーシブサウンド)は個人的にはなんかリバーブかかってるなくらいの印象。Dolbyなどのライセンスを利用したきちんとした空間オーディオ機能とは全くの別物。
ファームウェアと挙動
購入時のプリインファームウェアバージョンは4.3.8.8。その時点で最新のファームウェアがインストールされていました。
マルチポイント無効時の複数台切り替えは後出しで接続を要求した親機を優先して接続を強制的に切り替えるよう。マルチポイント有効時に3台以上で切り替える場合は2台目の接続が切断され、3台目が接続されました。
Fast Pair対応だけでなくGoogle Play 開発者サービスによるイヤホン本体・バッテリーケースのバッテリーステータス表示に対応しており、Google純正のバッテリーウィジェットで左右のイヤホン、バッテリーケースの充電レベルの確認が可能です。
コーデックはSBC/AAC/LDAC/LC3対応で、一般的なAndroid端末であればLDAC、iOS、Mac、Windows 11ではAACで接続するはずです。製品によってはLDAC利用のためにコンパニオンアプリからの有効化が必要だったりしますが、標準でLDACが優先されます。
注意が必要なのがLC3で接続される場合で、LC3は低遅延、低ジッタ、低消費電力ですがLDACより音質面で劣ります。LC3対応機器と非対応機器間で接続の切り替えに失敗したりマルチポイントが上手く機能しなかったりする場合があります。コンパニオンアプリも利用することが出来ません。とくに、最新のWiFi/Bluetoothアダプタを搭載するWindows 端末でLC3が優先的に利用される機器が増えているはずです。
その他、マルチポイント接続利用時にもLDACコーデックが無効にならないようなので通信環境が安定していないと音途切れしやすくなる場合もあるかもしれません。
(追記)Bluetooth SoCのベンダとOEM元、レイテンシについて
Android アプリ「Bluetooth Scanner」でBluetooth SoCのベンダを確認してみたところ、Airoha製のチップが採用されていました。
台湾・Mediatekの子会社で、SONYやTechnics(Panasonic)の高級ワイヤレスイヤホンにも採用されている、通信品質に定評のあるワイヤレスイヤホン向けチップベンダです。
OEMはTiinlabが担っていることも分かります。1MOREというブランドで自社でもオーディオ製品を展開していますが、オーディオ製品のOEM/ODMを行う企業です。シャオミのグループ企業のひとつで、MiOT Ecosystemに名前が連なっています。
この製品はゲームモードも搭載されていませんし、音途切れ低減のためにディレイを長めに取っているようです。Pixel 8a上のSuperpowered Audio Latency Test Appで測定したレイテンシは、
- LDAC(品質優先):424ms
- AAC:290ms
- SBC:255ms
とモダンなワイヤレスイヤホンの中では若干大きめになっています。いずれも低遅延音声出力APIであるAAudioを使用したものです。一般的なAndroid デバイスではベストエフォートのLDACに優先接続されるはずですから、遅延が問題となる用途には向いていませんね。(追記ここまで)
まとめ
公称-52dbのANCに相違なく、アンダー1万円の価格帯では最高峰のANC性能を実現しているのが魅力的な製品です。ハイレゾ相当のLDACコーデックだけでなくLC3にも対応しており、利用環境次第で省電力化や低遅延の恩恵が受けられます。音質的には聴き疲れしにくく、フラットで素直な音を鳴らしてくれると思います。
一方で、ネガティブなポイントはaptX系コーデックやワイヤレス充電に非対応なこと、低遅延モードが用意されていないことでしょうか。コンパニオンアプリを利用するかGoogle Play 開発者サービスによるバッテリーステータスの通知がないと残量が見づらいのも利用環境次第では使いづらいかも。
いずれにしろ、2024年7月の現時点ではアンダー1万円の価格帯だとEarFun Air Pro 3とEarFun Free Pro 3、このRedmi Buds 5 Proあたりがコスパ三優と言っていいでしょう。もうちょいするとEarFun Air Pro 4も発売されるはずですが、これも公称-50dbのANCとごく僅かにANC性能で見劣りすることになります。
具体的なターゲットを挙げるならば、低遅延モードが不要、PixelやMediatek Dimensity搭載Android スマートフォンを使用している方向けにお勧めの製品です。
参考/関連リンク
Redmi Buds 5 Pro - Xiaomi Japan
Which companies are included in the MIOT Ecosystem? Learn about everyone | MIOT-Global.com
*1:コンパニオンアプリはAndroid/iOSのみ。