先日購入したUSBテスター、POWER-Z KM003C。せっかく購入したので、自室に転がっているUSBケーブルのeMarkerをチェックしてみた。
eMarkerは3Aより上、つまり5Aが流せるCtoC ケーブルに搭載されるもの。3Aしか流せないCtoCケーブルやAtoC、AtoLightningなどには関係がない。
Poyiccot L字CtoCケーブル
こちらはAmazonで購入した片側L字のUSB4 Version 1.0 ケーブルだ。40Gbpsの高速データ転送と8k映像出力、240W/48V5Aの急速充電が可能なもの。そのぶん、ケーブルはごんぶとで取り回しはあまりよくない。被覆はたぶんPVCだろう。
メーカーなんだかブランドなんだか、Poyiccotと名乗っているがそのような製造者は実際には存在しないはずだ。ようするに、ノーブランドの深セン系販売業者のケーブルである。
ベンダーIDはUndefined(0x0000)で、つまりnullを返している。適切なベンダーIDが割り振られていない時点で、偽造eMarkerを使用した製品であることがわかる。きちんとしたメーカー品ではないのでわかっていたことではあるのだが。
コネクタ部分にUSB4.0の印字があるが、給電能力やデータレートを示すプリントはない。購入時点ではUSB4 Version 2.0が規格化されていなかったはずで、USB4.0と書いてさえいればその時点ではケーブルの能力が把握できるということだった、その点については製造者に瑕疵はない。
UGREEN L字CtoCケーブル
これもAmazonで購入したもので、片側L字の100W/20V5A、USB2.0(480Mbps)のケーブルだ。映像出力には非対応で、とりあえず100W流せるだけのケーブル、という感じ。そのぶんコネクタやナイロン編み込みのケーブルが細く取り回しはいいほう。
UGREENは各種ネットメディアでも比較的安牌な中華ブランドとして取り上げられるのを見かけるが、個人的には規格不適合の常習犯という印象がある。
こちらもUndefined(0x0000)を返していて、やはり偽造eMarkerを使用している。ただ、コネクタ部分に5Aの刻印があり、最低限使用者にケーブルの素性がわかるように意識しているというのは個人的には好感がある。現状、市場には240W EPRが必要になる製品というのがほとんど存在せず、100W流せるのさえ分かればそれでいいだろ、というのは一面では正しい。
DAISO ストレートCtoCケーブル
こちらはダイソーで購入したケーブルで、自室に転がってる中だと唯一ストレートタイプのコネクタを採用するケーブルだった。正確な購入時期は不明だが、それなりに前のはずだ。ネットストアなどを確認したが、パッケージの仕様などが現在販売されているものとは違うようで、既にディスコンとなっているのかもしれない。
ベンダーIDは0x1156で、これはオランダのCybertechを示している。実在するIDを返したからといって必ずしも偽造でないと断言することは出来ないが、少なくとも一目でわかるレベルの偽造品は使われていない。C-AUTH対応機器でも問題なく機能するし。
被覆はPVCで、テンションには弱そうだ。給電能力や転送速度を示すプリントは一切なく、自分が忘れてしまえば一切素性のわからないケーブルとなるのはちょっといただけない。ディスカウントストアに並べる以上コストを切り詰める必要があるのはわかるが。
DAISO L字CtoCケーブル
パッケージが残っていなかったのだが、こちらもダイソーで購入したL字ケーブルのはずだ。ネットストアなど確認する限り、現在ダイソーではL字の100W/20V5Aケーブルが売られていなさそうなので、完全に終売となっているかもしれない。
こちらもベンダーID 0x1156で、CybertechのeMarkerを使用。おそらく、製造・販売業者も同じなのだろう。多摩電子なんだかオームなんだか、あるいはもっと別の商社なんだかしらないが。
こちらも被覆はPVCで、コネクタ部分に既にクセがついてしまっている。そのうち断線するかもしれない。やはり給電能力や転送速度の記載がケーブル本体のどこにもないのはいただけない。
CIO シリコンL字ケーブル
こちらはCIOのCIO-SLL240W。240W/48V5A対応のUSB3.2 gen2x2、つまりは20Gbpsの高速伝送に対応するシリコンケーブル。コネクタから被覆まで軟質シリコンでフルカバーされていて、ごんぶとの高速ケーブルの割には取り回しがよい。コネクタはちょっとでかいが。
ベンダーIDは0x2d2cで、これは深センのTankyaという企業を示している。AppleのMFi認証を通した製品のOEM/ODMを手掛ける受託製造企業といったところだ。
CIOは2023年にJBRCにも加盟しており、ぼちぼちひと様に勧めてもよいメーカーと言ってもよいのかもしれない。ただ、モバイルバッテリーなどを実際に手にとってみるとUSB-C レセプタクルポートが不必要に紫色に染色されていたり、ケーブルもコネクタサイズが比較的大きめなのにブランドロゴだけで転送速度や給電能力の記載はなかったり、完全に手放しで激賞するのは躊躇われる。
悩ましいのはL字に手を出してしまうから
実際のところ、規格に違反していないきちんとしたUSBケーブルが欲しいのなら、エレコムとかベルキンとかのきちんとした大手メーカーがUSB-IFの正規認証を取得しているとはっきり明言しているものを買えばよいだけの話だ。「きちんとした大手メーカー」であっても需要があるからと意図的に規格を無視した製品を出す場合もあるから、メーカー買いは禁物だが。
こうして偽造eMarkerの製品を購入してしまうのは、ひとえにお金をケチっているからというのと、配線をストレスなく美しく引き回したいという欲望に負けてL字ケーブルに手を出してしまうからだ。AtoCのL字ケーブルにはUSB-IFの正規認証を取得したものが存在するのだが、CtoCには正規認証を取得したものが存在しない…はずだ。
とくべつ配線にこだわりがないのなら、皆様にはやっぱりUSB-IFの正規認証を取得したケーブルを使用されることをお勧めしたい。規格違反品だからといって=ただちに焼損を起こすとか、デバイスを破損するとかいう話にはならない場合がほとんどではあるが、今後PD3.0の機器が増えてくればオプションのC-AUTHで非正規のeMarker ケーブルを弾くような環境も増えてくるはずだし、やっぱり安心感というものはある。何より、ルールをきちんと守っている企業の製品がきちんと利益を上げられる環境こそがリテラシーの低いユーザーにとってこそ望ましい。