南無。GoogleのUSB-C 3.5mm ヘッドフォンアダプター (2nd gen)

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アイキャッチ

いつの間にかGoogleのUSB-C 3.5mm ヘッドフォンアダプター(型番:G019B)が終売になってしまったようだ。昨年元値1,320円から2,490円にしれっと値上げされていたのだが、値上げ後の価格では手を出す人もいなかったのだろう。

Google ストアの製品ページ (リンク切れ)は消滅し、サイトトップに飛ばされてしまう。インターネットアーカイブなども確認してみたが上手くページが取得出来ていないのか製品情報をきちんと確認することすら出来なくなってしまっていた。

この製品はもともと、イヤホンジャックが廃止されたPixel 2に付属した、初代ヘッドフォン アダプターの世代交代品として登場したものだ。Googleはこの製品をPixel 2 ヘッドフォン アダプターよりも再生時間が38%延長され、プラグインの遅延が53%改善したと公称していたはずだ。

音質的に見るべき点なし

この製品、正直言って音質的な話をすると見るべき点はない。DACの素性的には96kHz、24bitのチップらしいが実際に吐き出すのは48kHz、24bitまで。

価格帯やコンパクトさを考えれば決して粗悪な音が鳴るわけではないが、サウンドキャラクターを語るような製品ではない。今でも低価格帯のスマートフォンにはイヤホンジャックが組み込まれているものが多いが、それらと大差ない非力さだ。ごく近年マシなDACアンプを積むようになったXperiaの上位シリーズや水月雨、往年のLG端末やGRANBEATなど、音響こだわりAndroid端末の組み込みDACアンプと比較すれば劣っている。

レイテンシの削減、消費電力の低減に重点を置いたピュアGoogle製品

音質以外の面に注目してみよう。据え置き型の「音楽を楽しむ」一点に注力した製品では無視されるが、ポータブルオーディオの世界では消費電力も気にする人はいるはずだ。有線のイヤホン・ヘッドフォンを使用するのはゲーミングが目的で遅延が気になる、という人もいるはずだ。

使用機材

比較対象としては最も分かりやすいだろう、Appleのヘッドフォンアダプタを使用する。Amazonで購入したもので、購入価格は¥1,324だった。定期的にモデルチェンジされているようで、使用するのは型番がA2049のもの。

MFi認証を取得した製品は基本的にAppleの指定するDACアンプを採用しているはずで、品質的にAppleの純正品と大きく変わるものではない。この辺は対象がLightningのアダプタであり、ちょっと古いがAV Watchで藤本健氏が比較検証記事を書かれているのが参考になると思うので目を通してみて欲しい。

Apple vs Google

左がApple A2049、右がGoogle G019B。Appleの方がコンパクトで細身。写真では分かりづらいだろうがAppleはコネクタ部がプラスチッキーで光沢がある。

親機はPixel 8a、イヤフォンはFinalのE500を使用した。

遅延

測定にはSuperpoweredのAudio Latency Test Appを使用した。Pixel 8aのスピーカー出力では18ms、Googleのアダプタは14ms、Appleのアダプタでは15msの遅延が発生した。どちらもスピーカーのそれより低遅延だし、僅か1ms程度の差となったが、一応Googleのアダプタの方が優秀な結果となった。

本体スピーカー
A2049
G019B
左から本体スピーカー、Appleのアダプタ、Googleのアダプタの結果。

本体スピーカーや有線出力で遅延なんて発生するのかと思う人もいるかもしれないが、USB-DACでも、オーディオインターフェースでも、PCやスマートフォン内蔵のサウンド機能でもレイテンシは必ず発生する。

クライアントOSやアプリケーション、オーディオインターフェースの間々でバケツリレー的に音声データのやり取りを行う中で、途切れが発生しないようにバッファリングを行うのだが、基本的にはこのバッファサイズが大きければ大きいほど音声の再生が安定する一方、レイテンシは肥大化する。スクリーンショットにある「Buffer size:96」がそれだ。

ただ、同じバッファのサイズでもDACやアンプ側の制御、コンデンサなどのアナログ的な部分のばらつきによっても遅延は発生する。例えば、以前DAISOで購入した変換アダプタは51msの遅延が発生した。使用するオーディオインターフェースによっては出力が有線だろうが明確に遅延が発生し、明らかに映像出力とズレているのが体感できる場合もある。

消費電力

USBテスター KM003Cを使用して音楽再生時の消費電力をモニタリングしてみる。西川貴教のFREEDOMを48kHz 16bit、システム音量20で再生してみた。Appleのアダプタは表示が0.25W前後で安定しているのに対して、Googleのアダプタは0.227W前後で駆動する。

0.25W
0.227W
左がApple、右がGoogle。

また、Appleのアダプタは同じボリューム設定でも実際に出力される音量・音圧が小さく感覚的には8~12ほど音量を上げないと実際のボリュームが近しい状態にはならないと感じる。ボリュームを上げるとそのぶんアダプタが消費する電力も増えるため、消費電力については明確にGoogleのアダプタが優れている。

結局金が稼げなきゃGoogleの負け

Googleは初代のヘッドフォンアダプタと比較して、”Pixel での音楽再生時間が長くなり、プラグインの遅延が削減されました。”と製品ページでこっそり紹介していたが、実際にはAppleのヘッドフォンアダプタおよびそれと同等のDACアンプを搭載しているはずのMFi認証製品より優れた低遅延、再生時間を実現する製品だった。外装を見ても、コネクタがピアノホワイトPVCのAppleのアダプタより、マットなTPEを全面的に採用するGoogleのアダプタのほうが金がかかっているはずだ。このへんは好みもあるだろうが。

残念ながら終売となってしまった以上、この製品は良いものなんだといってももう意味はない。当該製品に使用されているDACアンプはSynapticsのカスタムコーデックで、完全な同等品は市場に存在しないはずだ。Google ストアで取り扱いがあったため、ストアクレジットの現金化目的で購入された未開封品など、状態の良い中古が出回っている可能性はあるが。

本格的な高音質ドングルDAC、USB-DACアンプではないUSB-Cを3.5mmに変換するヘッドフォンアダプターというのは、AppleおよびMFi認証品があるのでケチって百均やAmazon、AliExpressでノーブランド製品を買ったりしない限り、粗悪品を掴まされるということはそうない製品ジャンルだ。

一方で百均に並べられる価格で製造するのは無理だけど、Apple/MFiより優れたなにかを提供出来る企業があったとしても、その製品が市場に受け入れられることはもうないかもしれない。いずれにせよ、この勝負はAppleの勝ちということです。