Qualcommは米国時間で9月1日、ニューヨークでイベントを開催、BluetoothでCD品質のロスレスオーディオを提供するAptX Losslessを発表した。
これはAptX Adaptiveの新機能で、BluetoothでCD品質に相当する44.1kHz/16bit ロスレスを提供するSnapdragon Soundの新たな機能として2021年に提供される予定。
AptX Losslessでは、ユーザーがロスレス音源を視聴していて安定的な無線環境にある場合、それを自動で検知してCD品質のロスレスオーディオを提供する。Bluetooth経由でCD品質のロスレスオーディオを提供するために、AptX AdaptiveはQualcomm Bluetooth High Speed Linkと連携して機能するとしている。無線環境が安定しているならば1Mbpsを超えるデータレートで、無線環境が混雑している場合は140kbpsにまでデータレートを落とし、音切れを最小限に抑える。
Snapdragon Soundにおいては96kHz/24bit ハイレゾ相当のオーディオを利用可能としていたが、そちらは非可逆圧縮。今回発表された44.1kHz/16bit ロスレスは可逆圧縮が提供され、ユーザーはどちらか好きなほうを選択できるとしている。
AptX Losslessの仕様
- 44.1kHz 16bit CD品質のロスレスオーディオ
- 音楽ソースがロスレスの時に自動検出して有効になる
- Bluetoothの接続品質に応じてビットレートを自動調整
- ユーザーがCD品質ロスレスオーディオと24bit 96kHz/ハイレゾ相当ロッシーを選択できる
「断片化」しているQualcommやAndroidのチップセット・コーデック対応状況
別にBluetooth オーディオ周りの話に限った話ではないのだが、Android スマートフォンは様々なベンダーが多種多様な製品を販売しており、その仕様についても千差万別だ。
1世代前のQualcommの独立式左右同時伝送 TWS+はフラッグシップ向けSoCのみで必要な周辺回路を提供するとしていたが、対応しているとされているSoCを搭載している端末においても現実的にはほとんど有効にされておらず、ユーザーの間で混乱を招いた。
一部の対応スマートフォンにしても、スマートフォンベンダーとしてはQualcommのフラッグシップSoCを採用し、TWS+にもきちんと対応する一方で、オーディオメーカーとしてはMediatek(Airoha)のチップセットを優先して起用するなどのちぐはぐな製品展開を行ったり、TWS+の対応について明言を避けるなどのユーザーとしてどの製品を選択すればよいのか分かりづらいという大変に混乱した状況があった。
また、Android OSにおいてはエンコーダーの無償提供が行われているものの、実際には必要な周辺回路が搭載されておらず、このバージョンではこのコーデックが使えるはずなのに実際は使えないとか、開発者向けオプションで使用しているコーデックの切り替えが行えるように見えているが、実際にはデバイスベンダーによって推奨コーデック以外の使用を封印されているとか、グローバルや中国版で対応しているコーデックが日本向け製品では使えないとか、とにかく細々とした「おま環」不都合が多い。
Snapdragon Soundを利用できる環境
Snapdragon Soundにおいても、その利用の条件は極めて限定的で、
- Qualcomm Snapdragon 8シリーズ モバイルプラットフォーム(今現在だとSnapdragon 888、Snapdragon 865G、Snapdragon 780Gとか)
- Qualcomm QCC514x、QCC515x、QCC3056シリーズBluetooth オーディオ SoC
- デバイスがQualcomm AptX Adaptive コーデックに対応
となっている。国内におけるAndroid スマートフォンマーケットシェアは2万ちょいのエントリーから4万くらいまでのミドルクラスに人気が集中しており、今後利用可能なチップセットは下に向けて増えていくだろうが、少なくとも当面の間はきちんと利用できる環境はほとんどのユーザーの手元には降りてこないと考えられる。
また、近年はじわじわQualcomm自体のシェアが落ち、MedeiaTekに逆転されつつある他、GoogleもオリジナルSoCを投入するなど、なんだか音質が良いらしいでSnapdragon Sound対応製品を購入しても親側のデバイスとの組み合わせ次第で全然機能していないということがある。
なるべく安価にAndroid スマートフォンでハイレゾ/ロスレス Bluetooth オーディオを楽しみたい場合、SnapDragon 780Gが96kHz/24bit ハイレゾ相当のAptX Adaptiveをサポートしている。つまり、現在国内市場に投入されている端末だとMi 11 Lite 5Gがそうだ。ただ、Mi 11 Lite 5Gは開発者向けオプションで利用するコーデックの変更が出来ず、比較検討用途ではあまり向いた機種ではない。
参考・関連リンク
Qualcomm adds Bluetooth Lossless Audio Technology to Snapdragon Sound | Qualcomm
Qualcomm Snapdragon Sound | The Science Behind the Sound | Qualcomm