Googleが8月15日(PST)、AOSPおよびPixel スマートフォン向けにAndroid 13を正式にリリースした。
Tensor搭載Pixel以外は8月のセキュリティフィックス単体でのアップデートはスキップされ、Android 13の適用によってセキュリティパッチレベルが2022-08-05に向上する。
Android 13の新機能
Material Youの拡張 - すべてのアイコンがMaterial Youのカラーに
Android 12で導入された新しいデザイン言語、Material Youだったが対応はAndroid システムと一部のGoogle系アプリに留まり、それもベータ版扱いで完全な移行とは言えない状況だった。Android 13よりMaterial Youのダイナミックカラーがすべてのアプリアイコンに拡張される。
とはいえ、デベロッパー側で単色のアプリアイコンを提供した上でアダプティブアイコンの微調整が必要になるため、完全移行にはまだ時間がかかりそうではある。アップデート後にPixel 5aで確認する限り現時点では利用することが出来ないようだ。テーマアイコンもベータ版扱いのままである。
アプリごとの言語設定
システム言語以外でアプリを利用したい多言語ユーザー向けにApp Language設定を提供するようになる。
オプトインしたアプリ限定の機能であり、現時点ではGoogle系アプリやChromiumブラウザなどで利用することができそう。日本語圏で利用されるアプリではあまり使われなさそう。
多言語テキストサポートの改善
最適化によってTextViewsを利用するハイフネーション(単語が行末で尻切れになるときに改行された単語にハイフンを挿入することでひとつづきの単語であることを表示する機能)をパフォーマンスへの悪影響を低減して利用出来るようになる。TextViewsを利用する日本語テキストでは折り返し処理が文節単位で行われるようになり、可読性が向上するとしている。
また、日本語テキストでアプリが新しいテキスト変換API(Text Conversion APIs)を利用している場合、ひらがなを入力しただけで漢字の検索結果が表示され、一度漢字に変換してから検索する手順が不要になるとしている。こちらはアプリ側が新しいAPIをサポートする必要がある。
カラー ベクターフォントのサポート
Android 13からシステムが利用する絵文字がBMPからCOLRv1というベクターを利用する形式に変更され、あらゆるサイズで鮮明にレンダリングされる。これはシステムがすべてを処理するということでAndroid 13へのアップデート後、すぐに体験できるはず。まあ、スマートフォンの画面サイズでこれまでの絵文字ソースが粗いなと思うことはないと思うが。
クイック設定パネルへのパネル追加体験の改善
アプリが新しいAPIをサポートすることで、アプリが提供するクイック設定パネルをユーザーが見つけやすく、アプリ側からユーザーに追加を促しやすくなる。これまではアプリのインストールに伴いサイレントでパネルの追加候補に増えるだけで、そもそもパネルのカスタマイズが出来ることすら知らないユーザーのほうが多いだろう。
プログラマブルなシェーダーの導入
プログラマブルなRuntimeShadreオブジェクトが導入され、アプリ上で波紋、ぼかし、ストレッチのような高度な映像表現が実現出来るようになる。
メディアコントロールの刷新
新しいAPIをサポートするアプリではメディアコントロールも刷新される。聴いている音楽のアートワークやアプリに合わせて外観が変化する他、タブレットのようなより大型のディスプレイを搭載するデバイスと一貫性のあるデザインとなる。
どうも通知ドロワーを下ろすとメディアを再生していなくてもメディアコントロールが挿入される部位に空白が置かれるようになったようだ。
アプリから権限の取り下げが可能に
不要となった権限をアプリ内から取り下げることが出来るようになる新しいAPIが提供される。デベロッパーによる新しいAPIへの対応が必要となる。
MIDI 2.0の標準サポート
USB経由でMIDI 2.0 デバイスを接続して利用するための標準サポートが追加。
Nearby device permission for Wi-Fi
これまではアプリが近くのデバイスをスキャンする際に位置情報の権限が必要だったが、新しいAPIを利用することで最小限の権限で近くのデバイスを見つけて接続できるようになる。
クリップボードの自動消去
メールアドレスや電話番号、アカウント情報などをコピーすると、一定期間でクリップボードの履歴が自動的に消去されるように。
スクリーンショット撮影の無音化
スクリーンショット撮影時、ヘッドセットなどを利用時にも必ずスピーカーから効果音が鳴っていたのが鳴らなくなったようだ。
クイック設定パネルからQRコードの撮影が可能に
クイック設定パネルの候補として「QRコードのスキャン」が追加されたようだ。Google Play 開発者サービスに依存する機能のようで、一般的なGMSを搭載するデバイスであればデバイス標準のカメラアプリを無効にするなどしてしまってもQRコードへのアクセスが出来るようになる。ちょっと立ち上がりのレスポンスは悪い気がするが。
注意が必要そうな新機能
アプリの通知は権限の許可が必要に
Android 13をターゲットとするアプリで、アプリから通知を送信するための権限として、新たに「POST_NOTIFICATIONS」が導入される。
アプリが通知を受信する際にもユーザーから通知に関する許可を得る必要がある。なにか権限を要求されると、とりあえずプライバシーが侵害されると考えて許可を与えないユーザーはそれなりに多いと思われるので、今後アプリの通知が正常に受信出来ないというサポート事案がますます増えていく可能性が高い。
Bluetooth LE Audioのサポート
Android 13からLE Audioが標準でサポートされることになる。ただ、LE Audioの利用には親機であるスマートフォン側がハードウェアでもサポートしていること、つまりBluetooth5.2に対応していること(現時点で対応しているPixel スマートフォンはPixel 6、6 Pro、6aのみ)、子機側もハードウェアとファームウェアの両面でLE Audioをサポートしている必要がある。
現時点ではLE Audioをサポートする子機が流通しておらず、今後ファームウェアアップデートや新しい製品の発売で対応が進むと思われるものの、事実上利用することはできない。また、Snapdragon 480や690、695あたりのプロセッサを搭載したエントリー〜ミドルの最新のデバイスではAndroid 13にアップデートしてもLE Audioを利用することは出来ないはず。
オーディオ再生の音質向上を期待している人をときどき見かけるのだが、基本的には電力消費の削減が1番大きな改善となる。ハンズフリープロファイルを利用した音声通話の品質は大きな改善となるはずだが。
Android 13以前にも解放される機能
フォトピッカー
Android 13のリリースに伴いAndroid 11以降のデバイスにGoogle Play経由で更新が提供される。
これまでAndroidでは、ファイルをアプリと共有する際、ドキュメントピッカーと呼ばれる機能が利用されてきた。フォトピッカーはドキュメントピッカーの拡張版というか、制限版のようなもので、これを利用することでアプリへ「端末内の全てのメディアファイルへの閲覧権」を渡さずに写真や動画を共有できるようになる。
OpenJDK 11 アップデート
Android コア ライブラリの更新、デベロッパー向けの Java 11 プログラミング言語のサポートが行われる。
こちらはAndroid 12以降が対象、ART Mainline モジュールのアップデートの一環としてGoogle Play システムアップデート経由で行われる予定。
アップデート後、発生した問題
今後なにか問題が発生した場合追記する。
- トースト表示が白字に白の文字が表示され、文字の認識が出来ない問題が発生しているのを確認。(NewPipeのバックグラウンド再生などで発生を確認)
- ホワイトリスト方式で対応OSを管理している一部のアプリで非対応のOSであると表示されてアプリが機能しなくなっている。「みずほ証券」などのアプリで問題を確認したが「みずほ証券」は8月16日中には制限が解除されたようだ。
- 不具合というか、仕様なのかもしれないが一部のアプリで画面の分割を利用時の挙動がAndroid 12以前のものと変わっている。なるべく画面の縦横比を維持したまま画面を分割するために表示が小さくなりすぎるものがある模様。
- Pixel 4および4 XLでQi ワイヤレス充電が利用できなくなる問題が報告されている模様。
参考・関連リンク
Android Developers Blog: Android 13 is in AOSP!