Googleが2022年10月20日にGoogle Play ストアにて「Google Wi-Fi Provisioner」アプリの配信を開始しました。「Google Wi-Fi Provisioner」アプリはAndroid 10以降のデバイスに自動でインストールとアップデートが適用されます。
10月24日の現時点ではAOSPやGoogle Developers Blogなどにも解説はなく、具体的な役割の説明はされていませんが「Google Wi-Fi Provisioner」アプリはProvisioner(Provisioningと言うIT用語にはユーザーへのサービス提供の仕組み、という意味合いがあります。)の名前の通り、Wi-Fiサービスを提供するためのシステムアプリです。
より具体的には、Wireless Broadband Alliance (WBA)が推進している「Open Roaming」という、どの事業者から発行されたアカウントでも世界中どこでも安全に公衆Wi-Fiを利用出来る仕組みの利用に関係するものと見られます。
Open Roamingとは
「Open Roaming」サービスを利用するとPass Pointアクセスポイントからの識別信号を受信してローミングサービスの確認を行い、安全な認証でWi-Fi網への自動接続が可能となります。国内でも特定の通信事業者のSIMやアカウントと認証を一元化した公衆Wi-Fiは既に存在します。(d Wi-Fiなど)ただ、こういった公衆Wi-Fiは相互の利用性が低く、暗号化も既に脆弱性が指摘されて久しいWPA2に留まっているものも多いです。
Pass Pointとは
Wi-Fi Allianceの認定する通信規格のひとつです。事業者向けの規格であり、家庭向けWi-Fiルーターでは使用することは出来ません。以前は、HotSpot2.0と呼ばれていました。通常のWi-FiはSSIDに対応するパスワードが必要ですが、ホストとクライアントの相互がPass Pointに対応することでクライアントがホストを認識するだけでシームレスに自動接続が行われます。また、パスワードではなく各キャリアから提供される証明書を使用し、暗号化の方式も最新のWPA3が指定されているため非常にセキュアです。
Googleの描く未来図
Googleとしては、Wi-Fi Allianceと連携して標準仕様の策定に取り組んでいるWBAが推進し、より厳格なセキュリティが指定されているOpen Roamingへの早期の対応を(通信キャリアなどの事業者側に)促していきたいものと考えられます。
実はAndroid 11以降を搭載したGoogle Pixelには既にOpen Roamingのサインアップ機能があります。Googleアカウントによる認証でOpen Roamingのプロファイルを生成して対応するWi-Fiローミングサービスに接続することが出来ます。Pixel スマートフォンで先行して実験されていた機能が問題なく機能しているのでより多くのAndroid搭載デバイスに展開されていくというわけです。
公衆Wi-Fiの将来は
「Google Wi-Fi Provisioner」は無効化することは出来ますが通常、完全なアンインストールは出来ません。とはいえ、Open Roamingは(2022年10月)いまのところ都心のコワーキングカフェ、大学や研究機関などから整備されている状態なので一般の方は当面役に立つこともなく、無効化してしまっても問題が発生することはないんじゃないかなと思います。たぶん。
とくにここ最近はコロナ禍による訪日外国人の減少(規制緩和により回復しつつありますが)やWi-Fiの利用を目的としたユーザーのマナーの悪さとか、実際に収益に繋がっていないのではないかという指摘もあって7SPOTの撤退を皮切りに東京メトロやファミリーマートもサービスを打ち切るなどフリーWi-Fiスポットの数が減少しつつあること、キャリアやユーザー、メディアの関心もWi-Fiサービスより5Gモバイルデータ通信に移っていることなどから、日本国内で公衆Wi-Fiというものの将来自体がどうなっていくのか見通しが立てづらいところです。
参考・関連リンク
Google Wi-Fi Provisioner - Google Play ストア