10月5日(日本時間)、GoogleがAndroid OSの新バージョン、Android 14をAOSPに公開・Pixel デバイス向けに正式リリースしました。今後、Google以外のOEMベンダーの端末にも順次展開されていくものと思われます。
今年の2月にデベロッパープレビューが提供開始され、4月からβリリースに移行していたものが一般向けに提供開始されるかたちとなります。
今までと何が違う?
Android 14ではAndroid 12L、13の内容に基づきタブレットやフォルダブル端末への最適化が更に推し進められています。その他、
- バッテリ消費量の明確化
設定で確認できるバッテリ消費量の表示が、これまでのアプリごと・システムのバッテリ消費量に加え、コンポーネントごとのバッテリ消費がより詳しく確認できるようになります。
他、Pixel デバイスではバッテリセーバー画面も刷新され設定を「標準バッテリーセーバー」と「スーパー バッテリーセーバー」のどちらかで設定できるように分離されます。
バッテリーセーバー使用時のバッテリーアイコンの色も赤から黄色に変更されました。色覚多様性への配慮だと思われます。
- 画面点滅による通知の追加
新しい通知方法として画面の点滅による通知が追加されます。画面がフラッシュすることで通知を受けたことが確認でき、点滅時の色も設定できます。
カメラのフラッシュも点滅させることもできますが、かなり強烈な光が出るので利用する人がいるかは微妙。
- アプリのクローン(複製)機能
同じアプリを複数起動できるアプリクローン機能も提供される予定です。この機能はOEMベンダーの設定で有効・無効が決まるので全面的に利用できるかは微妙。
Pixel デバイスでは利用できないよう。
- テキストの拡大(スケーリング)の柔軟性向上
たとえば、これまでPixel デバイスでのフォントサイズの最大倍率が130%だったのがAndroid 14では200%までの拡大をサポートします。
また、フォントの拡大を設定すると元々大きかったテキストが大きくなりすぎる問題があったのですが、Android 14ではすでに十分大きいテキストについては、その大きさが維持されるようなしくみに変更されます。
- セキュリティリスクのあるアプリのサポート停止
マルウェア対策として、targetSdkVersionが23より低い古いアプリがインストールできなくなります。なお、Android 14にバージョンアップデートを行ったデバイスでは、targetSdkVersionが23より低いアプリがインストールされたままになります。
- 写真や動画のアクセス権限の厳格化
ファイル全体ではなく特定の写真やビデオに限定したアクセスを、アプリに対して許可できるようになります。
「すべての写真へのアクセスを許可」「写真を選択」「許可しない」の3択が用意され、「写真を選択」の場合、利用者が選択した写真や動画のみしかアプリからはアクセスできません。
- カメラ、オーディオ、グラフィック、ネットワーク機能の標準サポートの強化
カメラの強化として新たにUltra HDR写真がサポートされます。AndroidのUltra HDRは、JPEG形式と完全な後方互換性があるほか、必要に応じて通常のHDR表示と切り替え可能。一部の機種ではさらに10bitカラーの撮影も可能となるとのこと。
カメラ拡張機能も追加され、アプリに長い処理時間を許可したり、サポートされているデバイスでは低照度撮影など計算量が多くリソースをより使用するアルゴリズムが使用できるようになります。
オーディオ機能の強化では有線ヘッドセットでロスレスオーディオが扱えるようになります。
グラフィック機能では、Canvasレイヤーから高度なGPU機能を活用することが出来るようになります。
ネットワーク機能では、Wi-Fi 7の標準サポートが導入されます。当然、これら機能はハードウェア側でのサポートも必要となります。
- 「ヘルス コネクト」のシステム内包化
現在はベータ版、単独のアプリとしてGoogle Play ストアで配信されている「ヘルス コネクト」が正式版となりシステムに内包されます。
ヘルス コネクトはユーザーの健康およびフィットネスデータを管理するプライバシー制御機能です。
Pixel スマートフォンの場合は既にGoogle Play経由でサイレントにインストールされ、[設定]の[セキュリティとプライバシー]から[プライバシーの詳細設定]からアクセスすることが可能となっているはずです。
Android14では[セキュリティとプライバシー]から[その他のセキュリティとプライバシー]にまとめられています。
- 位置情報アクセスの明確化
アプリがデバイスの位置情報にアクセスする際に表示されるダイアログに、新しいセクションが追加されます。
ユーザーがGoogle Play ストアのデータ セーフティ セクションの情報を確認したうえで、データへのアクセスを制御できるように整備されます。さらに、こうした仕組みがGoogle Play以外のアプリストアでも利用できるように公開されます。
また、位置情報へのアクセスを許可したアプリが共有方法を変更し、第3者とデータ共有を開始した場合、ユーザーに定期的な通知が行われるように変更されます。新しい位置情報の共有ページは、設定からアクセスできる。
- 全画面表示インテントの改善
Android 11からはスマートフォンがロックされている状態でも、どのアプリでも全画面インテントを利用した通知が行えました。
Android 14では、あらかじめ開発者が必要な設定を行うことで、アプリインストール時にこの権限を自動で付与できますが、アプリインストール時にこの権限が付与されるアプリは通話とアラームのみに制限されます。
この権限は、ユーザーがAndroid 14に更新する前にインストールされているアプリではOSを更新後も有効なまま。設定からこの権限のオン・オフを切り替え出来るようになります。
つまり、フルスクリーンモード中の通知表示をブロックする設定が追加されます。
- システムUIの改善
ジェスチャーナビゲーション利用時に、新しい戻る矢印・予測型戻るアニメーションが表示されるようになります。現在のGoogleが推し進めているデザインフレームワーク「Material You」に合わせ、利用しているテーマカラーや壁紙に合わせて表示されるように変更されます。
「共有シート」の微調整も行われ、アイコン表示数などが増え無駄なスペースがなくなる他、デベロッパーがカスタムアクションの追加を行うことも出来るようになります。
Pixel デバイスではロック画面に表示される時計、これまではHomeとウォレットに固定されていたショートカットもQRコードスキャナやライトなどへカスタマイズも出来るようになります。
- より柔軟な設定
「地域別の設定(Regional preferences)」から、気温の単位や週の開始日などを好みに合わせて設定できるようになります。たとえば気温の単位を華氏・摂氏で選んだり、週の開始日を日曜日から月曜日に切り替えたりできるようになったりします。
うーん、だいたいこんな感じでしょうか。基本的にはセキュリティ・プライバシーに関してより厳格に管理されるようになり、とくに大画面環境でのユーザビリティ向上の取り組みが行われています。
専用のモデムチップが必要となるため既存の端末のアップデートでは利用できませんが、衛星通信経由のSMSもサポートされます。これは新しいPixel スマートフォンやGalaxy スマートフォンで実現するものと思われます。Qualcommも衛星通信機能の「Snapdragon Satellite」を発表済みで、各社フラッグシップの新モデルから対応を進めていくはずです。
一方、国内ではKDDIが既存のLTEバンドを利用した端末に依存しないスターリンクとの衛星通信を提供し始める予定もあり、ハードウェア的な対応コストが必要な方式がどこまで支持されるかは今後次第といったところ。
そういえば、アプリケーション実行を行うAndroid ランタイムの更新はOSのアップデートとは分離され、Playストア経由で提供が始まりました。今後はランタイムの更新、コンパイルの最適化によるアプリ起動速度の高速化などの恩恵がAndroid OSのバージョンアップとは関係なく受けられます。