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DAC搭載のType-C - イヤホンジャック変換アダプターは音声出力遅延の原因になります、という話

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アイキャッチ

Bluetooth オーディオにかなり大きな遅延があることは既に多くの方が認知されていると思います。ただ、有線オーディオ出力でも環境によっては通常のスピーカー出力やイヤホンジャック経由より遅延が増大することがあります。

実際に、最近のイヤホンジャック非搭載のスマートフォンで安価な変換アダプターを使用して音声出力を行うと実はそれなりに大きな遅延が発生することがあります。

なお、この記事で取り上げているのはDACチップ搭載の変換アダプターで、DAC非搭載(つまり既にアナログに変換されているオーディオ信号をパススルーするだけ)のアダプターはここまでの遅延増大は発生しないものと思われます。

測定の方法について

SuperpoweredのAudio Latency Test Appを使用しています。原理は単純で本体スピーカーから音声を出力し、本体マイクから音声を拾うまでのタイムラグを取得するもの。

今回の使用機器は母機がPixel 6a、出力先のイヤホンはFinalのE500を使用しています。測定にはAndroidの低レイテンシ オーディオAPIのAAudioを使用。

別記事でまとめているのですが、Pixel 6a 本体スピーカーからの音声出力におけるレイテンシは22msとなっています。AAudioについての解説も以下の記事にあります。

hikkie.hatenablog.jp

Google USB-C - 3.5 mm アダプター

まずはGoogle純正の変換アダプターでテストしてみます。以前はGoogle ストア直販の価格が1,320円だったのですが、現在は2,490円とかなり値上がりしてしまいました。たぶん、ストアで一番安価な製品だったのでクーポン目当てで単品で狩られたりしていたせいだと思います。

Google USB-C - 3.5 mm アダプター

製品ページの技術仕様では、

Pixel での音楽再生時間が長くなり、プラグインの遅延が削減されました²。*1

と旧製品と比較してのレイテンシの削減を公称しています。

直撮り 18ms

Pixel 6aに接続し、Latency Test Appでレイテンシを計測。結果は18ms。本体スピーカーからのレイテンシは22msですから、USB-C イヤホンジャック変換経由の方がむしろ早いという結果に。

ecola/エコラ事業部 USB Type-C イヤホンジャック変換コード

こちらはダイソーにて330円で購入した株式会社ラティーノ(パッケージに会社名の記載なさそうだけど)のecola ブランドの変換アダプターです。型番はE-AC-7。ダイソーネットストアの商品ページがこちら

ecola e-ac-7

現在の定価は2,490円もするGoogleのアダプターとは価格差が7倍以上にもなります。価格差に見合う性能差がただのイヤホンジャック変換アダプターに存在するのでしょうか?

直撮り 51ms

こちらもPixel 6aに接続し、Latency Test Appでレイテンシを計測。結果は51msとなりました。18msだったGoogleのアダプターと比較して33ms、本体スピーカーの22msと比較しても29ms遅延が増大しており、秒間が60フレームで換算すると2フレーム近いレイテンシが発生してしまっています。

シビアな応答性が求められる用途では「変換アダプター」も吟味を

かなり簡単なテストだがこれだけで変換アダプターの素性ひとつではっきりと遅延が増大していることが分かった。ゲームモードや低遅延モードを考慮しない場合、200ms~遅延するBluetooth/A2DPほど極端に大きなものではなく、人によっては気付きもしないだろうが、シビアな応答性が要求される用途ではそれなりにインパクトのあるレイテンシだと思う。

今回は市場でもっとも安価であり、つまり最も低品質であろうダイソー製品をある意味でやり玉に挙げてしまっているのだが、サードパーティ製品はだいたい「ハイレゾ対応」とか「高耐久・断線に強い」「2in1(充電しながら使える)」などを謳っている傾向があり、低レイテンシをきちんと重視している製品を探すのは困難だ。

ネット上には色々なジャンルの製品レビューが出回っているがイヤホンジャック変換アダプターは単価がかなり安く取り上げる魅力が少ないのか追及している人をあまり見たことがない。MFi認証を取得したLightning - 3.5mm アダプターが出回り始めたときにオーディオ系メディアが音質のチェックを行い、MFi認証取得しているものは規定に沿ったDACチップを使用していて有意な音質の違いはないのでは?という記事をいくつか見た記憶があるくらいだ。

ひとつひとつ製品を買って回ってレイテンシを調べるのも実際のところ大変面倒だし、現実的には低レイテンシ性能が重要な用途で変換アダプターを使用するのであればAppleかGoogleの純正変換アダプターを使用するのがよいと思う。

Lightning コネクタとUSB-Cの両方があるのとめんどくさいのでここで詳しく取り上げないがApple純正の変換アダプターも十分な低レイテンシを実現しています。あと、Apple純正のものの方が値上がりしてしまったGoogleのものより1000円くらい安いので。

*1:アダプターは、以前の Pixel 2 ヘッドフォン アダプターと比較して再生時間が 38% 長くなり、プラグインの遅延が 53% 削減されました。とのこと