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《2024年1月》各OSでのBluetooth LEAudio対応状況

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LEAudioとUltra Low Latencyの表示

Bluetooth LEAudioはこれまでBluetooth2.1+EDRというレガシー仕様で実現していたBluetooth クラシックオーディオに取って代わる、将来の新標準となるBluetooth オーディオです。これまでよりも低消費電力でこれまでよりも低遅延のオーディオを実現します。

これまでよりも、と書きましたがこれは通常クラシックオーディオの標準コーデックであったSBCと比較しての話であり、新標準のLC3コーデックは現在実質的な標準コーデックの地位にあるAACやレガシーaptXと比較して大きく音質が向上しているわけではありません。レイテンシは大幅に削減されていますがそれでも(ハードウェア固有のレイテンシを除いた)システム総体で最低でも50ms程度は遅延し、製品によっては100ms以上の遅延が発生します。所謂音ゲームやFPS・TPSのようなインタラクティブ性の高い用途ではまだ厳しい水準です。

LC3の上位コーデックであり音質面もハイレゾ相当に向上するLC3+に用意された超低遅延(ULL)モードでは~20ms程度に遅延が抑えられるとしており、遅延に敏感な用途ではULLモードが用意される製品の使用が推奨されます。既存の2.4GHz帯無線は遅延について公称していない製品が多いですが~30ms程度のものが多い印象です。レイテンシを完全に排除した製品を望む場合は赤外線を選ぶ必要があります。

LEAudioはBluetooth バージョン4.0以降の規格であるBluetooth LE(LowEnergy)の名前を冠していますが、実際にはBluetooth 5.2コア仕様に準拠するアイソクロナス転送を利用するものです。このため、ソフトウェアの対応状況を問わずに最低限Bluetooth アダプターがBluetooth 5.2以降のコア仕様をサポートしている必要があります。

また、これまでのBluetooth/A2DPで使用されるコーデックはソフトウェアスタックとして分割して提供されていましたが、LEAudio サポートにはスタック全体を交換する必要があり、作業量が多くシステムの安定を損なう危険性が伴います。

LEAudio Readyとして既に様々なチップが流通していますが、リファレンスやライブラリの提供が想定より遅れたこともあり昨年~一昨年の時点で楽観視されていたほど多くの製品は対応しないものと考えられます。

対応イヤホン・ヘッドホン

既に複数のメーカーからLEAudioに対応する製品が発売されています。SONYのLinkBuds S、XM5を筆頭に、Xiaomi、Creative、Philips(TP Vision)、Eppfun、Earfunなどからも対応製品が発売されており、安価なものは実売6000円程度から購入出来るよう。

どのような形でLEAudioを利用出来るようにするかの実装が個別の製品によって異なっていてBluetooth デバイス名をクラシックオーディオとLEAudioで分離している機器*1の他、コンパニオンアプリからイヤホン・ヘッドホン側をLEAudio優先モードに切り替える機種*2も存在します。接続モードを切り替える手段が用意されておらず、親機とのネゴシエーションで一番良いと判断した接続方法を自動的に選ぶものもあります。クラシックオーディオへの対応を完全に排除したLEAudio専用の製品も存在します。

また、LEAudioの低遅延性能を重視したチューニングになっているのかクラシックオーディオでもあまりディレイを取らずに他製品より接続性が弱いとされているものも散見されます。きちんと製品仕様や市場評価を把握した上で購入されることをお勧めします。

Windows 11/10

Windows OSにおいてはWindows 11 バージョン22H2の5月CリリースにおいてLEAudio サポートが追加されています。実際的には後継バージョンである23H2から対応をアピールしています。

システムソフトウェアとしてのWindowsはLEAudioおよびLC3をサポートしましたがそれだけでなくBluetooth アダプターのドライバーパッケージにおけるソフトウェアレベルでの対応Bluetooth アダプターのコントローラや専用オーディオDSPでの実装(ハードウェアオフロード)が必要となります。

Intelが13世代Coreからの対応を謳ったことがあったためにCPUの世代に関係あるものと誤解しているかたを見ますが、Intelは無線モジュールのベンダーでもあり、これは13世代Coreと抱き合わせで(あるいはSoC内蔵で)販売されるIntel製WiFi/Bluetooth アダプターで出荷時からの対応を始める、という意味合いです。

13世代以降のCoreやCore Ultra搭載機種であってもグレードの低い製品はアダプターのBluetooth バージョンが古いものが混在しており、非対応の場合があります。具体的にどのモジュールがLEAudioに対応するかIntelは公開していません。

Intelと同じくWindows向けのCPUベンダであるAMDは単独でWiFi/Bluetooth アダプターの提供を行っていませんが、Mediatekと協業してMediaTek Filogicを投入しています。こちらはFilogic 380Filogic 360などがLEAudio対応をアナウンスしています。搭載製品の販売開始は2024年半ばとなることがアナウンスされています。

Windows向けのWiFi/Bluetoothアダプターは上記二社の製品以外にもBroadcom、Realtekなどの様々なベンダーから発売されていますが、2024年初頭の流通品でLEAudioをサポートするドライバ、オーディオDSPを実装しているアダプターは存在しないはずです。*3

Windowsの場合、クラシックオーディオでハイレゾ相当のオーディオ再生を実現するLDACコーデックのサポートを追加するAlternative A2DP Driver*4のような非標準ソリューションも存在しますがそういった代替ドライバーも同様の状況のはずです。

今後のドライバアップデートでLEAudioに対応する可能性があるハードウェアを使用しているか確認したい場合は、デバイスマネージャーからBluetooth アダプターのファームウェア バージョンを確認し、LMP(Link Manager Protocol)に対応するコア仕様番号を確認してください。確実にLEAudioを利用したい場合はCreativeのZen Hybrid Proにバンドルされているようなオーディオトランスミッターを使用するのが賢明です。*5

クラシックオーディオではWindows 10で非対応だったAACコーデックのサポートも追加されています。利用可能なコーデックはクラシックオーディオでSBC/aptX/AAC、LEAudioでLC3となります。

2025年にサポートが打ち切られるWindows 10ではLEAudioのサポートは行われません。標準的な環境で利用可能なコーデックはクラシックオーディオのSBC/aptXのみとなります。

Mac OS/iOS/iPad OS

いずれも現時点ではLEAudioに非対応で、LEAudio対応のオーディオトランスミッターなどを使用しない限り利用が出来ない状況です。

たとえばiPhoneの場合はiPhone 14からBluetooth バージョン5.3対応を公称しておりアップデートによる対応可能性はあります。

利用可能な標準コーデックはMacOSがSBC/aptX/AAC、iOSとiPadOSでSBC/AACとなります。

Android

AOSPにおいてはAndroid 13にてLEAudioが標準サポートへ追加されました。現在出回っている対応製品では基本的にハードウェアオフロードではなくCPUを利用したソフトウェアスタックで実装されているはずです。

一方でハードウェアレベルではBluetooth 5.2以降をサポートし、同一のチップを搭載する機種ではLEAudioサポートが行われていてもOEMベンダーによって機能が無効化されていてLEAudioが利用出来ない場合があります。

こういったベンダの意向はLEAudio自体がベータ段階で不安定であることが理由である可能性もありますし、上位の機種との差別化のために無効化されているとも取れます。確実にLEAudioを利用したい場合は端末ごとに対応状況の確認が必要です。対応機種は開発者オプションからLEAudio 優先接続モードへの切り替えスイッチを有効にすることも出来ます。

利用までのハードルはやはり色々ありますが対応端末が最も手ごろなプラットフォームです。SONY製端末などはイヤホン側のヘルプページで対応状況を公表していて把握しやすい点も有利です。こちらはクラシックオーディオでの接続となりますがQualcommのSnapdragon Soundなども実質的にQualcomm SoCを搭載したAndroid端末専用の状態にあります。

ベンダーによってどのコーデックを実装するかが選択可能なので必ずしも全てのコーデックが実装されるとは限りませんが、クラシックオーディオではSBC/aptX/AAC/LDAC/Opus、Qualcomm SoC搭載機種でaptX adaptive、Samsungの独自でScalable Codec、Huawei(とSavitech)が主導する中華端末で使用されるLHDCが使用可能です。LEAudioではLC3が必須で、LC3+がオプションとなります。

Linux

Ubuntuなどで採用されているマルチメディアフレームワーク PipeWireでLC3を使用したオーディオストリーム*6のサポートが始まっています。ただし、GitHub - google/liblc3よりLC3コーデックをビルドしてインストールする必要があり、多少の知識と手間が必要です。

もちろん、Bluetooth5.2で策定されたアイソクロナス転送をサポートする適切なBluetooth アダプターも必要となります。

ChromeOS

現時点ではLEAudioに非対応で、クラシックオーディオ使用時のコーデックはSBC/AACのみとなります。

ChromeOSではAndroid アプリが動作することをアピールしていますが、Bluetooth デバイスのコンパニオンアプリは正常動作せず、正式に対応しているワイヤレスイヤホン・ヘッドホン向けアプリはGoogleのPixel Buds シリーズのみであると思われます。

*1:Creative Zen Air Plusなど。

*2:例:SONY LinkBuds Sなど。

*3:もし存在を確認したら教えてください!

*4:サードパーティの有料アプリ。

*5:将来的にCreativeはLEAudio トランスミッターの別売を予定しています。ゼンハイザーやeppfunなど他のベンダも同様の製品を将来的には発売するものと思われます。

*6:プロファイルはBasic Audio Profile (BAP)のみ。ハンズフリーやヘッドホンなどの上位プロファイルに非対応