iOS向けの有料コンテンツブロッカーアプリ280blockerがトビラシステムズ株式会社に譲渡(買収)されました。
トビラシステムズ、非連続の成長にむけたM&A戦略における初の案件 広告ブロックサービス280blockerを完全子会社化 |トビラシステムズ株式会社
譲渡理由やトビラシステムズがどのような会社であるかは280氏自身が公式に語っているので、そちらをご確認ください。
280blockerのトビラシステムズ(株)への譲渡について | 280blocker
9/21追記:トビラシステムズが今後の運営方針を発表しました。
280blockerの今後の運営について | 280blocker
追記ここまで
280blockerが企業に譲渡されることのなにが問題なのか
この件について、一部のネットコミュニティでヒステリックな反応を見かけました。
おそらくは2020年10月にNano Adblocker (+Nano Defender)のChromeブラウザ版がトルコの開発者に売却され、危険な機能が追加されたためにストアから削除された事件を想起して危険性を感じているのだと思われます。
また、やきうのお兄ちゃんたちがwikiを作り、そこで280氏の作った広告ブロックフィルタを日本語圏では主にAndroid スマートフォンで利用されている広告ブロッカー AdGuardのユーザーフィルタとして利用を推奨していた手法がメジャーであったために、280氏制作の広告ブロックフィルタを利用できなくなることについて、これから先どの日本語フィルタを使えばいいのか分からないと混乱した状態にあるのだと思います。
トビラシステムズは身元のはっきりした企業でマルウェア化の心配は極めて薄い
東証一部上場の日本企業であり、スミッシングや詐欺電話などをブロックするアプリを3大キャリアにも提供しています。優れた技術力や倫理観を持つ企業かは外からはわかりませんが、少なくとも一定の監査を受けるであろう企業であり、280blocker自体が国内でもっとも支持基盤のあるコンテンツブロッカーとしてセキュリティについても厳しい目を向けられていますから、マルウェア化の可能性は極めて少ないと思われます。
懸念点
もっとも懸念すべきは、これまで買い切りで提供されていた機能が有料になるとか、一部の優良広告はすり抜けるようにアプリやフィルタが改変されることでしょう。これについては、実際にそうなってみないとなんとも言えないというところです。
AdGuardにおけるユーザーフィルタとして280blockerを利用する意味は既に薄い
AdGuard日本語フィルタは確かにかつては不評でしたが、多くの方々の報告、長年広告ブロックコミュニティに貢献してきたフィルタ制作者の協力によって一昔前とは別物と言えるほどに精度が高くなっています
広告ブロッカーの本体はフィルターであり、それぞれのブロッカーにも独自のフィルタ記述方式があります。AdGuardはuBlock Origin記法の大部分をサポートしていますが、きちんと機能しなかったり、動作が異なったりすることがなくはないです。
その一方で、当然ですがAdGuardの純正フィルタはAdGuardできちんと動作します。AdGuardを使用されるのであれば、AdGuard純正のフィルタを利用されることを推奨します。
フィルタ構成について
これが確実な正解なんて言えるものはありませんが、あまりにたくさんフィルタを購読するのはおすすめしません。また、目的が同じようなフィルタを多数導入することも推奨しません。これはパソコンブラウザでも、モバイルアプリの広告ブロッカでも共通です。
Android版AdGuardであれば、広告ブロックカテゴリのAdGuard ベースフィルタ、AdGuard モバイル広告フィルタ、言語特化フィルタのAdGuard 日本語広告フィルタの3つは購読したほうが良いと思います。
AdGuard ベースフィルタ
EasylistとAdGuard 英語フィルタを合わせたフィルタです。Easylistが英語圏用のフィルタという認識で購読の必要はなく、外すようにとする向きもありますが、Easylistは日本語圏のみで使われるようなルールも含むマルチ言語基本パックです。致命的な不具合の発生を確認しない限り無効にしないほうが良いと思います。(不具合自体はそこそこあると思う)
AdGuard モバイル広告フィルタ
汎用的なモバイル広告ネットワークを対象としたフィルタです。モバイル端末で利用する場合は購読を外さないほうがいいです。
AdGuard 日本語フィルタ
日本語圏向けフィルタです。単独での購読を推奨するオールインワンのフィルタでなく、ベースフィルタやモバイル広告フィルタと組み合わせて使うものです。
やきうのお兄ちゃんたちのWikiで導入法としてたまごフィルタの購読を推奨していますが、たまごフィルタはAndroid版Firefoxのublock originを対象に書かれたフィルタであり、要素の隠蔽(httpsフィルタリング)の利用を前提としたフィルタのため、DNSフィルタリング有効、httpsフィルタリング無効を推奨とするやきうのお兄ちゃんたちの設定では不適切だと思います。
プライバシー系のフィルタはどうしてもトラッキングが気になる場合以外は外してしまった方がウェブのエクスペリエンスは快適になるかもしれません。ソーシャル系や迷惑系のフィルタはソーシャルボタンなどが鬱陶しいと思うならば購読すべきですが、httpsフィルタリングを有効にしないとあまり消えないのではないかなと思います。セキュリティ系のフィルタは、既知の危険サイトはGoogle セーフブラウジングやSmartScreenのようなブラウザ側の機能でブロックされるので、基本的に不要だと思います。まったく有用でないわけでもないのですが…。